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生涯をともにしたいワークチェア座りっぱなし、Herman Miller Aeron Chair

築50年のマンションに住んでいるくせに、家具や家電は新しいものじゃないと居心地は悪い。古いカメラが好きなくせに、結局買うのは最新型のライカM。たいして理解できないくせに、新しいガジェットを見るとつい触りたくなる。昭和喫茶が趣味なくせに、そこで広げるのは MAC BOOK PRO 。古いクルマに惹かれるくせに、カーナビやエアコンがないと生きていけない。クラシックなビスポークスーツが大好きなくせに、メゾンブランドの最新コレクションにも興味津々。
みなさん、はじめまして。山下英介と申します。1976年生まれの雑誌編集者、ギリギリ写植世代。古いモノも、新しいモノも諦めきれない雑食野郎。
そんな私が一発目にご紹介するのは、アーロンチェアです。本当だったらアンティークの革張りチェアにでも座って、ケメックスで淹れた珈琲の香りに包まれながら原稿執筆……といきたいところだけれど、現実はそんなに優雅じゃない。結局のところマズいインスタント珈琲をがぶ飲みしながら、1週間寝るとき以外(ときには寝るときも)はほぼ座りっぱなし……ということになるわけで、そんな自分にはやっぱりこの椅子しかないのです。実際問題ぎっくり腰だし。そして意外にも、ときおり見せる愛嬌ある表情がちょっとだけ愛おしい。プラスチックとアルミでつくられたモダンな椅子のくせに、コイツはなぜだか1962年に建てられた僕のおんぼろマンションにも、違和感なく溶け込んでしまうのです。
別に無理やりこじつけているわけじゃありませんが、現代を生きる編集者である自分がつくりたい……いやつくるべき本や雑誌って、こういうものなんじゃないかな、とも思うのです。