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時間があるときに手入れしたいアイテム甦るテーブル

11年前に現在の家へ越してきた際、玄関の小物置き用に、当時、青山にあった北欧家具の名店「ルカ スカンジナビア」でコンパクトな天板サイズ(300×500)のテーブルを買い求めた。デンマーク製のヴィンテージで1950年代のものだったと思う。
ロートレックの絵柄がついたお気に入りのキートレイを乗せて洒落た感じに使おうと思っていたのだが、子供が生まれてからは保育園グッズやシーズンオフの手袋などでてんこ盛りに。当初の理想とは程遠い使い方で、小さな机の上はなし崩し的にゴチャゴチャと散らかっていった…。
今回の休業中に自宅家具のレイアウトを変えていた僕は、この机のことをふと思い出し、リビングのマガジンテーブルとして置いてみることにした。玄関へ降りてテーブルの上に積まれていた邪魔なモノを取り除いてみたところ、10年間放置していただけあって見るも無惨な姿がいよいよ現れた。オイルフィニッシュのチーク材だった(はずの)天板は日焼けとともに油が抜けて白っぽく退色している。かなり乾燥しているようでもある。
ここで思い付いたのは下駄箱にあったTAPIR(タピール)のオイル。本来は革の靴底用に塗るものだが、原料は「亜麻仁油、オレンジテレピンオイル、酢」と自然由来のものばかり。経験上大丈夫だろうと、テーブル全体を乾拭きをしたあと、柔かい布にオイルを少量取り満遍なく塗り込んでいく。時間をあけて、再び乾拭き。ついでに同じTAPIRの「インプレグニアルング」と呼ばれる防水スプレーを振りかけて3度目の乾拭きでフィニッシュ。ブラッシングこそしなかったが、レザーシューズとほぼ同じ工程でテーブルは見事に息を吹き返した。
玄関にはリビングで使っていたKartellの3段コンポニビリを置いたことで、機能性はむしろ上がった。この自粛生活で甦ったのはテーブルばかりではない。配置を変えてみる、色を塗り直してみる、作り替えてみる。これは「物欲を捨ててミニマリストに改宗します」という意味ではなく、遊び方や楽しみ方を増やして「良いものをより豊かに使う」ということである。この先、僕らに求められるのは「あきらめ」ではなく、更に一歩進んだ「クリエイティビティ」なのではないか。

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