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家籠りにちょうどいいアイテム擬似・深夜食堂

緊急事態宣言が出て何が困るって、仕事自体も勿論そうだが仕事帰りの寄り道が出来なくなったということ。乗り換え駅の池袋で、カウンターに座ると同時にチューハイが出てくるほど行きつけていた、あの居酒屋へも行けないのだ。宣言前から自粛していたので、もう随分とご無沙汰である。

「一日が終わり、家路へ急ぐ人々。ただ何かやり残したような気がして、寄り道したい夜もある」って、珠玉のセリフ。僕はドラマ「深夜食堂」が大好きだ。出会いは数年前の飛行機内。美保純をゲストに迎えた「メンチカツ」の回を観たのがきっかけだった。すっかりハマって、すぐにレンタルで全巻借りた。しばらく観ていなかったのだが、自宅籠り生活を機に遅ればせながらNetflixへ加入。Bluetooth対応のワイヤレスヘッドファンを初めて買って、夜な夜な「深夜食堂」を楽しんでいる。エピソード毎に多彩なゲストと個性豊かなレギュラーキャストがつつく美味そうな「めしや」のメシを見ていると、ついつい真似をしたくなる。そう、「めしや」のメニューは家でも作れるシンプルなものばかりなのだ。兄・ノエルに連れて行かれたストーン・ローゼスのライブでイアン・ブラウンの歌が下手すぎるのを聴いたリアム・ギャラガーが「これでボーカルやれるんだったら俺でも歌えるぜ」とオアシスを結成した、なんてくだらないエピソードがあったような気もするけど、とにかく「俺でも出来そう」と人に思わせることはスリーコードのロックンロールがそうであるように、初期衝動に火をつけるにはもってこいなのだ。僕は普段から料理をするのが好きで(大して美味くはないと思うが)趣味のひとつはキッチンドランカーだと思う。金宮の炭酸割りを飲みながら台所でメシを作る。日常の邪念が霧散してゆく瞬間だ。ともかく「深夜食堂」を観るとメシを作りたくなる。先日もエピソード「ハムカツ」の回で無性に揚げたくなってしまい、ふと気づいたら深夜23時頃、ハムにパン粉をまぶしていた。揚げたてを皿に盛り輪切りのレモンを添えて、小林薫の真似をしながら「へい、おまち」とテーブルに出したら、本を読んでいた妻に「注文してねーし」と言われた。

そう、僕の深夜食堂は「勝手に注文してくれりゃあ、できるもんなら作るよ」じゃなくて「注文されなくても俺が作りたいものを勝手に作るよ」ってのが営業方針なわけで。小林薫みたいに、どんな注文にも「はいよ」って応えられる器の大きな人間にいつかなりたい…。