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2020春夏をさきどりポスト・デジタル時代のカルテ

「2020年の春夏をさきどり」というテーマ。ひと昔前までは新しい流行がやってくると、それがトレンドセッターからマスまで(それなりに時間をかけて)ゆっくりと降りていく感じだった。ピラミッド型のファッションヒエラルキーがあるとすれば、その頂点にハイブランドのデザイナーなど流行を生み出す人種が位置し、その下にイノベーター→オピニオンリーダー→マスのボリュームゾーンがある。僕らの青春時代に当たり前だった「洋服屋の怖いお兄さんと仲良くなって海外の流行をいち早く教えてもらう」という習慣はこのピラミッドにおいて水が上から下にしか流れないことを意味していた。つまり「ある一点」を注視していれば傾向と対策が見えてきたわけだ。しかし。情報過多社会の2020年において、このピラミッドは半ば崩壊。僕もショップにいて痛感するのだが、お客さんが既にとても詳しいのだ。調べようと思えば何だってGoogle先生が教えてくれるこのご時世。「イタリアでは~らしいよ」とか「来年はロンドンの◯◯というデザイナーが…」みたいな話は、ほぼ無効。特に情報強者の若いお客さんにとっては「既に知っているor自分には必要のない情報」なのだ。じゃあ、どーすんの?速さ(早さ)では勝ち目がないのだ。と、ここで我らがAmvaiの登場となる(笑)。いや、ほんとに毎度感心するんだけど、小林さんや山下さんをはじめ、ここに名を連ねる諸先輩方の書く話って、ホントにビックリするくらい「無駄なこと」なのだ。無駄過ぎて、個人的過ぎて、主観が強すぎて、ウィキペディアにはとても載せられない(笑)。つまり検索しても出てこない情報(というか体験)だし、その偏りゆえに面白いのだ。ここで結論。「ピラミッド崩壊でもはや流れが読めないのならば、読まない」。つまり、主観で勝手にやる。勝手にやってると、出会い頭の交通事故みたいな感じでネクストトレンドとジャストミートすることが稀にある。悪魔の十字路でクロスカウンター。例えば2018年の春夏、僕はちょっとした悪ふざけでリングヂャケット製スーツの左袖に生地ネーム(吊しで売られている袖モノに付いているアレ)を付けたまま着ていた。そのころ、時代はLouis Vuittonのバッグに「Supreme」と書いてある記号的ファッション全盛期、「あー、服にロゴ付けときゃいいんだべ?そんなら、わしだって付けちゃるけんね、SCABALって」なーんてミックス方言で嘯きながら。周囲の反応は失笑と驚きのハーフアンドハーフだった。翌2019年の春夏には飽きたから青いネームをはずして普通に着ていたが、2019年秋冬GUCCIのビジュアルを見て驚いた。ジャケットの左袖に付けっぱなし生地ネーム風の「GUCCI」タグが!!それ見たことか、ミケーレ君、残念ながらわしの方が一年早かったね、と。勝手にやってると、そのうちに時代が追いついてくるなんて偉そうなことを言うつもりはないけど、いまやメゾンブランドより板橋区の方が「早い」ことだってあるのだ。70's、80's、90'sという10年区切りのスタイル分類すらナンセンスに感じる現在。とりあえず今日はスリーピースのインナーにRomeo Gigliの開襟シャツやビーズネックレスなど夏の開放的なアイテムを重ねて冬服をコーディネートをしてみた。トレンドよりもマイブーム。それを集積しながらマイスタイルを構築することが、自分では洋服を着ないのに、したり顔で横から見て能書き垂れているだけのワイドショーみたいなトレンドウォッチャーを遥か彼方に追いやるための処方箋ではなかろうか。