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手元で馴染んだオーダー品典・日・芬の共作マルガリータ

馴染んだオーダー品、というテーマ。洋服よりももっと毎日使うもの、それは家具。スウェーデンを代表するデザイナー、ブルーノ・マットソンがデザインした天童木工製のソファ「マルガリータ」を7~8年前に購入した。
ソファとは言っても、この椅子はイージーチェアをコネクターで連結させるもの。我が家では座面が低くて傾斜が強いLowタイプを3つ繋げてスリーシーターのソファとして使っている。成形合板を使った流線型のフレームは軽量かつしなやかで、座り心地も非常に柔らかい。体を預けるとソファ全体がしなることで力を分散させるのか、ふわりと受け止められたような感覚になる。日本を訪れた際に畳文化に感化されたマットソンが1976年にデザインしたこの椅子はセパレートでも使えるという点で狭い日本家屋にピッタリだし、「畳ずり」と呼ばれる脚部分はソリのような形をしており、これは畳を傷つけないためにデザインされたものだ。
で、この椅子をオーダーすると通常は天童木工の椅子用生地バンチの中から張り地を選ぶのだが、その中にはツイードや防炎加工のPE混が多い。冬はいいけど、夏場にゴロゴロしたらチクチクするんじゃないかなぁ、なんて思っていた僕はふと思い付いた。当時、うちの店で売っていたヨハンナ・グリクセンのファブリックは織り柄が美しい厚手の丈夫なコットンでソファの張り地に向いてそうだ、と。彼女はアルヴァ・アアルトと共にARTEK社を創立したマイレ・グリクセンの孫で、アルヴァ・アアルトがデザインしたテキスタイルを世界で唯一織ることが許されている、北欧デザイン界の超重要人物。10年ほど前にヨハンナが来日したときは弊社バイヤーのテリー・エリスらとともに、デザインセンタービルで開催中だったフィンランドデザインの展示を彼女直々にガイドしてもらい、そのあと新宿のお多幸で一緒におでんをつついた。
2000年から10年以上の間、ビームスでは彼女のテキスタイルをエクスクルーシブ販売してきたが、天童木工家具の張り地に選んだのは僕が初めてだったようだ(いまは受け付けてないらしい)。結果としてスウェディッシュデザインの日本製ソファにフィニッシュファブリックを乗せた典・日・芬の共作ソファが出来上がり、いまも我が家のリビングに鎮座している。さすがに8年も毎日使っていると(猫はいないけど子供はいるし)所々に擦り切れそうな部分が出てきた。この椅子は本体と座面をスナップボタンで固定するデザインなので、張り地やマットレスの交換も(椅子本体を搬出する必要がないから)比較的容易だ。やはり、直したり交換したりしながら長く使うことを前提としたロングライフデザインだと言える。別売の生地をメートル買いした分だけ値段はそれなりに上がってしまったが、オーダー品は長く使えば使うほど特別な愛着がわいてくる。次に張り替えるときはRAF SIMONSデザインのクヴァドラ社(デンマーク)テキスタイルでも乗せてみたいけど、高いんだろうなぁ…。クッションで¥50,000だよ(笑)?