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チープだけど(だから)好き健全なる安物

とある仕事で一時期、ユニクロの服を大量に購入したことがある。1900円のオックスフォードボタンダウンシャツとか3990円のカイハラジーンズとか、価格に対するクオリティが異常によくて驚いたのだが、それより絶望的になったのは、オンラインストアのコメント欄ではそんなすんごい洋服に対しても容赦ない罵声が飛び交っているのだ。やれ「値段が高い」とか、「ダークカラーだから埃がつきやすい」とか「毎日着てたら生地が薄くなった」とか。うーん不健全。きっと30年前のヘインズのパックTなんて、今売ったらクレームの嵐だろう。
つい最近、郊外のショッピングモールに入っているとあるDCブランドのショップで、義父の洋服を購入したときも驚いた。僕が学生時代に買っていたそれらと較べると値段は1/2以下で、ユニクロよりちょっと高いくらい。それなのに接客とかギフト用の包装とかお見送りとか、いちいちラグジュアリーブランドなみに丁寧なのだ。とてもありがたいけれど、なんだか日本、ちょっとおかしくなっていませんか? あまりに無理しすぎて、社会にひずみが出てしまっているのだ。
その点去年旅をしたキューバなんて、極めて明快。市場経済の恩恵をこうむっている一部の市民以外、サービス精神なんてほぼ皆無。サービスほしけりゃ金をくれ、の世界である。もちろん普通のレストランやホテルはメシもあんまり美味くないし、プロダクトの品質も微妙。ファミレスやらコンビニで「店員の態度が悪い」なんて言ってるヤツには、ぜひキューバや旧ソ連圏の接客を味わっていただきたい。僕はいわゆるキューバシャツの本場モノを、現地では最高品質といわれるお店で買ってみたのだが(以前にも Amvai で紹介済み)、縫製は見事なまでにボロボロ。一度洗ったらほとんどボタンが外れてしまいそうだ。AMVAR 仲間の小林さんに見ていただいたところ「まったくやる気ないんでしょうね〜(笑)」と言われてしまったのだが、僕はなんだか嬉しくなってしまった。これこそが人間の仕事ってヤツでしょう。
そういえばキューバのシガー工場には、工員たちにずっと新聞や本を朗読する「朗読師」というのがいるのだが、その内容が人気の恋愛物語や冒険モノだったりすると、作業効率はグイグイ上がってくるのだという。もちろん日本人の勤勉さは尊いけれど、所詮人間なんてそんなものなのだから、あんまり求めすぎないほうがいいと思うな。僕は。